
“超”面白い映画でした!最高!
「アルゴ」のような緊迫したポリティカルサスペンスでありながら、クライマックスでは「マッドマックス」を彷彿とさせる怒涛のアクション映画へ突き進んでいく!硝煙と爆風の中、疾走するDIY装甲車!エンタメ映画としての景気の良さに、にっこにこで楽しめました。
韓国映画らしい、ユーモア、シリアス、アイロニーが適度に配されたバランスの良い脚本にも大満足です!

韓国と北朝鮮の大使館員が生き残りを懸けて協力関係を結ぶ。
その事実だけでも胸に熱いモノがこみ上げて来る本作ですが、前半部を通して当時の韓国、北朝鮮の関係性を丁寧に描写してくれるので日本人の私から見ても双方の葛藤や思惑を自然に伺い知れる点も親切で良い!
こうした国外への輸出を前提とした質と志しを持つ韓国映画の意識の高さにはただただ感心させられます・・・。

人が逃げる、脱出する。このモチーフは自然に映画的になるのが魅力だなと感じました。
映画は同情と共感のメディアだと、どなたかがおっしゃっていて「なるほど」と思った記憶がありますが、まさしく”
逃げる”というモチーフほど観客の共感や同情を集めるものは無いなと思うのです。
”逃げる”ということは裏を返せば追われているという状況を示し、対峙するのでなく追われているということはそこに力の差があることを示します。登場人物達は弱者であるとそれだけで動的に描写出来るので、正に純映画的なモチーフであると言えますね。

世界は今、分断の時代と言われ、主義思想、人種、宗教、様々な違いが憎悪を生み、人々の繋がりは断ち切られてしまっている。そんな状況において、自国に長く横たわる分断をテーマに組み込み、人々が結束することで困難に立ち向かう映画を製作する。その社会性の高さと、エンタメ性を両立させる手腕に一人の映画好きとしてとても感動しました・・・。
凡百の作り手ならば、一蓮托生となった後にも、北はこちらを裏切ろうとするが・・・なーんて展開でひと悶着作ったりしそうなものですが、そうした足の引っ張り合いは入れずにあくまで共に脱出に向けて努力する。性善説で展開されている本作の脚本にはこの時代ならではの、人は連帯を取り戻すべきだとの祈りが込められているように感じます。
困難を乗り越える為の方法は、出し抜き、陥れる利己の行いではなく、他を思い力を尽くす共助の姿勢なのだと改めて気付かせてくれた映画体験でした。
スタッフH